C#7の星空周遊

愛知県の山とベランダで星空撮影

NGマスターフラットでの補正でどうなるか

Image Calibrationでの設定を間違って処理した事でフラット補正をしくじった事までは分かったが、PixInsight Forumの言っていた「ケラレ状態」とはどんな状態なのかサッパリ分からなかったため、またいろいろ調べてみた。その結果、間違い処理の元々はbiasデータでの二重減算によって、フラットデータの特に低諧調でのピクセル値(=諧調値)が小さくなることだと分かった。このNGマスターフラットデータで補正すると、ライト画像周辺部の輝度が上がり、画像中央部が相対的に暗く落ち込んだように見える事も理解できた。
右の画像は、フラット補正後のライト
画像と補正に使ったマスターフラット
の画像を並べてみた。
左列はマスターフラットがNGの場合で
右列はマスターフラットがOKでの処理
した結果を示す。
左側のライト画像は中央が暗く落ち込
んだように見え、右側の正常に補正さ
れた画像と比較して、差は一目瞭然だ。
しかし下のマスターフラット画像を見
比べても違いは分からない。

次にこのマスターフラットの統計値の違いや輝度分布を調べてみた。統計値は輝度データのmax,minや平均値、中央値などで、PixInsightではずばりのツール
Statistics processを使う。
右図は不正な処理と適正な処理での統計値の比較結果を示したもので、中央値は少し差がある程度ながら、最大値と最小値は随分差がある事が分かる。最小値の違いの意味は、NGフラット側(不正処理)はbiasのダブル減算によって低輝度側がゴソっと消えたという事なのだろうか。しかし輝度分布ではどんな違いなのかはピンと来ない。

輝度分布はステライメージの周辺減光・カブリ補正ツールで見る事はできるが、PixInsightにはこれに相当するツールはない。
そこでPixel Mathを使って画像の水平方向中心線での輝度分布を測定し表示するスクリプトを作ってみた。右図は画像中心を通るクロス線を描画したもので、画像の水平方向中心線とは、クロス線の水平方向の線で、この断面の輝度値を読み取ってグラフに表示してみる事にした。
右図はその輝度分布を測定した結果なのだが、横方向はフラット画像サイズでの左端から右端を表し、縦軸が輝度値を表す。(本来なら目盛線を描画したい所だが、今回しか使わないため簡単スクリプトで止めた)。双方の曲線の違いが輝度分布そのもの(一断面ではあるが)の違いとなる。NGマスターフラットの方は低輝度側がストンと落ちていて、OKフラットデータの分布とは明らかに違うと分かる。しかしこの違いでライト画像のフラット補正後はどんな違いが出るか。


フラット補正の演算を模した計算で違いは説明できるため、分布を近似した4次曲線を作り補正による違いを比較してみた。演算は[ライト輝度値÷フラット輝度値]なので単純な計算となる。なおここでは上記の実際の画像データではなく、左右対称の周辺減光を前提にした単純なモデルだ。右図の下段はフラットデータの輝度分布を模した4次曲線で、グラフの横軸右端が画像中心に相当する。中段はフラット補正前のライト画像の輝度分布、上段はフラット補正後のライト画像の輝度分布を示す。OKフラットで補正した場合、ライト画像の輝度分布は平坦になって横一直線となる。一方、NGフラットで補正した場合は、画像の周辺(左側)がグンと持ち上がった分布となる。輝度の高い部分を基準にすれば、画像中心部は輝度が落ち込んだように見える。PixInsightのForumが書いていた「ケラレ」の意味は、低輝度側がグンと落ちる事だと分かった。